ジェルネイルの仕上げに使われるトップジェル。
見た目はどれも同じような粘性のある透明の液体、でも中身には当然違いがあります。
ただ、何がどう違うか、比較するにはわかりずらいアイテムかも知れません。
先日グランジェのトップジェルが「ローヒートタイプ」に改良されたこともあり、今回トップジェルについてメーカー目線で詳しくお伝えすることにしました。
この記事を読んだ方は、お使いのトップジェルの良し悪しの判断基準が備わり、商品選びの参考になること間違いなし!
ぜひ最後までお付き合いを。
トップジェルとは
トップジェルとは、ジェルネイルの仕上げに表面に塗る透明のジェル、いわゆるクリアジェルのこと。その役割は次のとおりです。
なめらかな表面を作りツヤを出す
ジェルネイルの最大の特徴であるツヤ。トップジェルで表面をなめらかに仕上げることにより、そのツヤを最大限引き出します。
強度を作る
ジェルネイルには爪を保護、補強する目的でも使われ、強度を作るのもトップジェルの大切な役割。
パーツを固定する
アートネイルをする場合、パーツを乗せて固定する役割もあります(詳細はラインストーン付け方ページにて)。
トップジェルの使い方
通常ジェルネイルは、ベース、カラー、トップの3層で仕上げます。ベースジェルは爪に定着させること(や、オフ時にうまく取れること)、カラーは色を表現すること、トップは上記のとおりですが、それぞれ役割が違います。
例えばトップを爪に直接塗っても爪に定着せず、すぐに取れてしまいます。必ず、ベース→カラー→トップの順で塗ってください。
マニキュアと違ってジェルネイルは空気乾燥しないので、塗ったあとはジェルネイルライトで照射し、硬化します。
トップジェルの種類
トップジェルは大きく2種類に分かれます。
拭き取りタイプ
ジェルネイルライトでいくら照射しても完全には硬化せず、表面に硬化しなかったジェルが残るタイプです。残ったジェルは「未硬化ジェル」と呼ばれており、それが不具合というわけではありません。
未硬化ジェルが残るのはベースやカラーでも同じで、次に上に塗るジェルとつなぐ役割もあります。トップジェルは次に塗るジェルが無いので、未硬化ジェルは除去する必要があります。
具体的には、ジェルクリーナー(アルコール系の溶剤)をキッチンペーパーやスポンジワイプに染み込ませて、爪表面を拭き取ります。
拭き取りがうまくできなかった際には表面が曇ってしまう場合があります。このタイプのトップジェルはセルフジェルネイルでは縮小傾向ですが、ネイルサロンでは今でもよく使用されています。
ノンワイプ(完全硬化)
拭き取りの必要がないトップジェルは、ノンワイプや完全硬化タイプと言います。つまり、ジェルネイルライトで一定時間照射すると、表面に未硬化ジェルが残らず完全に硬化するタイプです。
ライトのパワー不足、照射時間不足などで、完全に硬化していない状態で表面に触れてしまうと、ツヤが消えて曇ってしまいます。
その他
・マットトップ
マットな表面に仕上げるトップジェルです。見た目の質感が全く違い、アートネイルで活用されるほか、爪の縦線を隠す目的で、カラーを使用せずクリアのまま仕上げてきれいな自爪のように見せるようなやり方もあります。
・ハードトップ
爪の保護などを目的に強度を高めたトップジェル。扱いの難易度が高く、オフ時に専用のマシンが必要となることがあり、セルフジェルネイルで使用されることはほぼなく、ネイルサロンで使われているプロ用のアイテムです。
・ワンステップ
ジェルネイルは、ベース、カラー、トップの3層で仕上げるとお伝えしましたが、その3つの役割をひとつにまとめたワンステップというアイテムもあります。
トップジェルの評価項目
トップジェルを評価する際は、以下の項目を見ています。
- ツヤ
- ツヤ持ち
- 硬化熱
- 黄ばみ
- 粘度
- レベリング
- 強度
- 剛性
- 臭気
- 暴露
ツヤ
トップジェルで最も大切な項目とも言えるツヤ。その良し悪しを決める要因は、簡単に言うと表面が凹凸なく平滑でツルツルしているかどうかです。他の素材でも同じですね。
ちなみにツヤは光沢度という数値で表すことができ、GU (Gloss Unit)という単位があります。ツヤツヤな表面(基準値)に対して相対的に何%の光沢があるかという数字で、光沢計という機器で計測可能です。
ツヤ持ち
硬化直後ではしっかりツヤがあるのに、そのツヤが長持ちしないトップジェルもあります。むしろ品質の差を分けるのはこの項目だと考え、グランジェでも非常に重視しています。
極端な例ですが、グランジェトップジェルを塗って1ヶ月の経時テスト写真です。
日常生活で手仕事や水仕事が多い場合など、ジェルに摩擦など接触があるとツヤが落ちる原因となります。なかなか計測によるフェアな比較は難しいですが、同じ手に違う種類のトップジェルを塗ると、数日で違いが目で見てわかります。
オンした時からオフする時までなるべくツヤが同じであることが理想です。
硬化熱
ジェルネイルは光のエネルギーと化学反応して硬化する仕組みで、その際必ず熱を伴い、硬化熱と呼ばれています。特にトップジェルで硬化熱が強い傾向にあり、ジェルネイルの大きな課題でした。今までかなり熱い思いをされた方もいるかもしれません。
硬化熱の温度に影響する要因としては、
- ライトの光のパワー
- 光源からの距離
- ジェルの量
- ジェルの成分
などがあります。使い方次第で熱さを避けることはできますが(詳細は硬化熱のコラムをご覧ください)、通常の使用であまりに熱さを伴うのは問題です。そこでリリースされたのがローヒートトップジェル。詳細は後述します。
黄ばみ
ジェルネイルは硬化の化学反応の際に、黄ばみが現れることがあります。黄変のメカニズムは専門的なお話(共役構造の広がり?ラジカル再結合?アミン系添加物?)になるので省略しますが、要は青色を吸収する化合物が生じてしまうことなどが原因です。
試しにお使いのトップジェルを、白い背景の上でそのまま硬化してみてください。商品によってはすぐに黄ばみが見てとれます。
透明なはずのトップジェルが黄ばんでしまうと、塗ったカラーの発色に影響があるので、もちろん黄ばみのないものを選びたいですね。
粘度
ジェルネイルははちみつのように粘り気があり、マニキュアユーザーがはじめてジェルネイルを使った時に、その高い粘度にとまどうこともあります。
粘度は温度との相関性があり、低いと粘度が上がり、逆に高いと粘度が下がります。
夏場にフタの締まりが甘かったジェルを、横倒しにしていたらサラサラになったジェルが漏れてしまった。また、冬場にジェルを使おうとしたら固くなったジェルが扱いにくかった、などはよくあるトラブルです。
使う方によって好みの粘度に違いもありますが、ご自身で粘度を調整することも可能。粘度を上げたければ冷蔵庫に入れて冷やしておく、粘度を下げたければ湯煎する、などやってみてください。
粘度にも単位があり、Ps・s(パスカル秒)で現わし、目安としては
- 水道水で1
- オリーブオイルで100
- ガムシロップで1,000
- はちみつで10,000
前後です。グランジェは室温(20℃)で4,000を基準に調整しています。
(セルフ)レベリング
ジェルネイルにおける(セルフ)レベリングとは、爪に塗ったジェルの表面が、爪のカーブに沿ってなめらかになっていくことです。
表面張力(分子同士が引っ張り合う特性)によりレベリングし、促進するためにレベリング剤が添加されており、そのレベリング剤と基材との相性やバランスが決め手となります。
ツヤの良し悪しにもつながる重要な項目で、レベリングが悪ければ刷毛ムラ、弾き、縮みの原因となります。
サッと塗って数秒後には滑らかにツルンとした表面になるのが理想です。
強度
ジェルネイルの壊れにくさについての項目。ここが弱いと先端などの欠けや割れのダメージに直結します。
ツヤ、ツヤ持ちにも影響し、強度が強いと表面の形状が維持されて、汚れにくく接触や摩擦にも強いため結果ツヤ持ちが向上します。
剛性
前項との違いが分かりにくいかもしれませんが、強度は「壊れにくさ」に対して、剛性が「変形のしにくさ」です。
剛性は強ければ良いというわけではなく、あまりに下の2層(ベース、カラー)とギャップがあれば、取れやすさの原因にもなります。
ジェルネイルは他ブランド同士で使用することも可能ですが、通常同じブランドだと剛性が近いジェルになっているため、ジェルが取れやすくなるリスクが下がります。
臭気
ニオイについての項目。ジェルネイルは無臭ではなく独特の臭気があり、使用中に不快に感じたり悪影響を及ぼす場合があります。ユーザー本人以外にも家族やペットにも嫌がられます。
臭気にも測定器がありますが、公式の単位はありません。臭気判定士という国家資格があるくらいなので、臭気は非常に感覚的で主観的な項目ですね。
以前はニオイの強いジェルネイルがたくさんありましたが近年はだんだんと抑えられている印象です。グランジェでも計測まではしていませんが、必ず確認して臭気の強いジェルは採用しないようにしています。
暴露
暴露と書きましたが、不要な光で硬化してしまわないかどうか、の項目です。
ジェルは一定の波長の光に反応して硬化する仕組みですが、その波長は日光や室内光にも含まれています。ジェルネイルライトを照射して硬化しないのは困りますが、使用中にフタを開けている状態で硬化してしまうのも同じくらい困ります。
ということで、通常の室内の明るさの中で容器を開けっ放しにして、ジェルを室内光で暴露した状態で数時間硬化しないかどうかチェックをしています。
もちろんテストを経て大丈夫なトップジェルを商品化していますが、少しの時間の暴露でも、その光はジェル内で吸収されて蓄積されるので、なるべく不要な光に晒さないに越したことはありません。使用中はこまめにフタをしめるようにしましょう。
ツヤが無くなった場合の対策
トップジェルのツヤが出ない、また消えて曇ってしまう主な原因は、
- 表面に油分などの汚れが付着する
- 表面が摩擦などにより細かくキズがつく
- ジェルネイルライトの照射が不十分なことによって硬化しきれていない
の3つです。対策としては、ジェルクリーナー(アルコール系の溶剤)による拭き取り、もしくはトップジェルの塗り直しによって解決します(詳細はジェルネイルのツヤを取り戻す方法についてのコラムにて)。
ローヒートトップジェルとは
コラム冒頭、文中で触れた「ローヒートトップジェル」について。
硬化熱の項目でも述べたとおり、様々な要因が温度に影響を与えますが、同じように使ってもその商品ごとにかなり差があります。
グランジェでは、以下の条件下でテストしてピークに達する温度が約50℃以下のトップジェルを「ローヒート」と定義してます。
- 放射照度:約60.0mW/c㎡(ミリワット平方センチ)
- 光源からの距離:4cm
- 波長:405(±1)nm(ナノメートル)
- トップジェルの量:内径2.6mmのチューブでセンサーの感温部を覆う量
放射照度とは、ジェルの硬化に必要な光のパワーの単位です。ジェルネイルライトの商品ページなどでよく記載されているワット数(W)は実はジェルの硬化には実は直接的な相関性がない場合があります(次回のコラムあたりでテーマにしますね)。
テスト用に定量出力(電池残量に関わらず一定の放射照度を照射)に改良されたジェルネイルライトを使用します。
トップジェルの量ついては条件を揃えて計測するのが簡単ではなく、少しの量の違いが温度に大きく影響します。なので定義を50℃以下ではなく「約」50℃以下となってしまっているわけですが、温度計のセンサーがΦ2mm、チューブの内径がΦ2.6mmなので、0.3mmのトップジェルで覆われている状態、実際に爪にトップジェルを塗っているのと近い状態を作って計測します。
グランジェのトップジェルのテスト結果はこちら。
15秒程度でピークの温度に達し、その温度は45.7℃。実際にはベースとカラーの層の上に塗るので体感温度はもっと下がります。ピークを過ぎると硬化の化学反応が終わっている(完全に硬化している)ため温度は下がり続けます。ただし、厚塗りなどして塗るジェルの量が多いと温度が高くなるのでご注意ください。
ちなみに、ローヒートモードを搭載したジェルネイルライトというのあります。放射照度が低く設定されており、確かに硬化熱のピークを抑えることにはなりますが、その分硬化までの時間が必要になります。
さいごに
トップジェルは違いの分かりにくいアイテムですが、様々な評価項目があり、テストを経た結果商品化されていることがお分かりいただけたかと思います。
商品を正しく評価するための指針にしてもらえると幸いです。