グランジェ商品開発担当の中島です。
美しい花にはトゲがある、などと言ったりもしますが、美を得ようとするとそれなりに代償が伴うものです。
美容整形はその最たるものですが、ヘアカラーや歯のホワイトニング、ハイヒールやカラコンなんかもそうかもしれません。
セルフジェルネイルもご多分に漏れず、美しい爪と引き換えに多少のダメージを受けてしまうリスクがあります。
とはいえなるべくリスクは減らしたいですし、商品の選択や使い方次第でリスクが減らせるのは確かです。
ダメージが原因で、大好きなジェルネイルが(一定期間にせよ)できなくなったという方に出会う度に、少しでも爪に優しいジェルネイルを実現したいと思わされます。
そこでこの記事では、「爪に優しいジェルネイルとはどんな商品なのか」、また「爪に優しくするにはどんな使い方が良いのか」、を検証したいと思います。
セルフジェルネイルの種類
セルフジェルネイルの種類について、ここではオフの違いから大きく2つに分けて考えます。
一般的なジェルネイル(ソークオフジェルネイル)
一般的なジェルネイルのオフのやり方は、
1:ジェル表面をファイルで削る(サンディング)
2:ジェルリムーバー(アセトン)を浸したコットンをジェルに乗せる
3:アルミホイルで巻く
4:約15分待ってから、ウッドスティックなどで落としていく
という4つの工程が必要。
アセトンでジェルを浸すので、ソークオフ(Soak:浸す)ジェルネイルとも呼ばれています。
はがせる(ピールオフ)ジェルネイル
はがせるジェルネイルは、オフの時にアセトンを必要とせずシールのようにそのまま取ることのできるタイプで、ピールオフジェル(ネイル)とも呼ばれます。
オフで専用のジェルリムーバーを使用する場合もありますが、アセトンと比較すると炭酸プロピレンなど爪や肌に負担の少ない成分が主に使用されています。
2つを分けるポイントは、爪に直接塗る下地の(ベース)ジェルの違いと、オフ時にアセトンが必要かどうかの違いにあります。
セルフジェルネイルのリスクの種類と対策
セルフジェルネイルのリスクには以下のような項目があります。
- ソークオフによるダメージ
- ピールオフによるダメージ
- 爪表面のサンディングによるダメージ
- ジェルネイルライトによる日焼け
- ジェル硬化時の反応熱(硬化熱)
- ジェルに触れてしまうことによるリスク
ソークオフによるダメージ
一般的なジェルネイルの場合、ここが一番避けがたく、また大きなリスクとなり得る項目です。
ソークオフで使用するアセトンは脱脂性、揮発性が非常に強い溶剤。そのアセトンを浸透させたコットンで15分程度密閉するので、爪の油分や水分を多く奪ってしまいます。
密閉後、乾燥してもろくなった状態で、ウッドスティックなどでジェルを落とし、さらに取りきれなかったジェルを除去するためにネイルファイルでサンディングをすることもあり、結果として爪表面がどんどん削れてしまいます。
当然、定期的にソークオフを繰り返していると爪が薄くなってしまい、痛くてジェルネイルができないと言う方が少なからず存在します。
対策としては、ジェルが軽い力で取れる程度までしっかりアセトンを浸透させ、爪に残ったジェルは決して無理をせずに優しく除去すること。取りにくければアセトンで密閉の工程を繰り返すことです。
また、その後の補水や保湿を忘れないでください。
あればネイルセラムやネイルオイルで、なければ肌用化粧水やハンドクリームでも代用可能。先にセラム(化粧水)で補水、その後オイル(クリーム)で保湿を、オフの後にしっかり行ってください。
ちなみに、爪への優しさを謳いオイルなどのケア成分がジェルに含まれた商品もいくつかありますが、オイルとジェルは親和性が低いため、混ぜると白濁してしまいます(エマルションと言います)。
ジェルが白濁していないということは、オイルが微量しか添加されていない可能性があり、あまり効果が期待できません。
なのでそのような商品をお使いの場合でも、ケアをしっかりとすることでリスクは軽減されるのでぜひ実践してください。
ピールオフによるダメージ
対して、アセトンを使用しないはがせるジェルネイルですが、こちらはピールオフ時に爪表面ごとはがれてしまう、というリスクがあります。
ジェルがすぐに取れてしまうのは困るのですが、はがせないというのも困ります。「持ちの良さ」と「はがれにくさ」はある程度トレードオフの関係なので難しいところですね。
また、ジェルの持ちは爪の状態や使用する商品の特性、またその商品との相性など、様々な要素があり一概には言えないのですが、対策はとしてはまず、無理に取らないこと。ある意味前項と同じです。
シールのようにはがせる、ということで力任せにはがしてしまうと、強く密着していた面が爪表面ごと持っていかれる場合があります。かさぶたを取る時のイメージで、ゆっくり優しく外してください。
また、専用リムーバーを使うことも対策となります。前述のとおりですが、はがせるジェルネイルの専用リムーバーは成分的にも肌への負担少ないものが多く、アセトンと比較するとダメージは大きく軽減されます。グランジェで言うとピールオフリキッドが該当します。
それでもスムーズにオフできない場合は、次回からジェルを塗る前にネイルオイルやハンドクリームを爪に薄く塗ること。つまり爪に一層防御壁を作るという対策も有効です。ただし、塗りすぎるとジェルが取れやすくなってしまうのでご注意ください。
商品を変えてみることで、あっさり解決する場合もあります。今ははがせるジェルネイルも選択肢があり、特徴も違い相性もあるので、商品レビューなどを参考に、ご自身の爪の状況と照らし合わせて選んでみてください。
爪表面のサンディングによるダメージ
サンディングとは、ジェルを塗る前にスポンジバッファで爪表面を削る作業のこと。
ジェルとの接着面(つまり爪表面)に少し凹凸を作り、定着を良くして持ちを良くする目的で行います。
一般ユーザーの方はどの程度サンディングが必要か分からず、削りすぎて爪が薄くなってしまうこともよくあるケース。
対策はとにかく、必要最小限のサンディングでとどめること。表面が少し曇る程度で十分効果があります。
ジェルネイルライトによる日焼け
肌への影響が懸念される紫外線とは、光の波長のうち10nm(ナノメートル)から400nm の間を言います。
ジェルネイルライトの波長はだいたい365~405nm(ナノメートル)か、ほぼ405nmだけ照射する物かの2種類です。
ジェルネイルでは紫外線にさらされている時間が長時間ではなく、そのダメージも限定的かもしれませんが、気になる方は後者のライト、つまり紫外線からわずかに外れた波長、405nmのライトを選択してください。商品パッケージや商品ページに記載があるのでチェックしてみましょう。
ジェル硬化時の反応熱(硬化熱)
マニキュアと違い、ジェルネイルは光のエネルギーと化学反応して硬化する仕組みで、放っておいてもいつまでも乾きません。硬化の際必ず熱を伴い、硬化熱と呼ばれています。特にトップジェルで硬化熱が強い傾向にあります。
独立行政法人国民生活センターのテストによると、某メーカーのジェルではライト照射の9秒後には最高温度となり、ジェルを厚く塗布したところは60度から65度に達していました。
人間の皮膚は、60度の場合10秒で、また70度の場合は1秒でやけどをするので、爪の上に塗るものとは言え使い方次第ではやけどのリスクもゼロではありません。
対策としては、必要最小限のジェルを塗ること、つまり厚塗りを避けることです。厚く塗ってしまうとその分熱が多く発生します。厚く塗りたい場合は、薄い層を重ねるように塗る→硬化するを繰り返したほうが安全です。
また、ライトを遠くから当てること、もしくはライトを数回に分けて当てること。
光が強いと硬化に伴う化学反応がそれでけ強く発生、一気に硬化させるとそれだけ熱も一気に発生するので、光を弱く当てる、もしくは回数を分けて当てることにより、ピークの温度を低く保つことができます。尚、ジェルは硬化してしまうとそれ以上熱を発生しません。
ただしそれだけ照射時間も長く必要となるのでご注意ください。
もう一つの対策としては、ローヒートタイプのジェルを使用すること。近年硬化熱対策をしたジェルも出てきており、完全に熱が出ないわけではありませんが、以前と比較するとかなり軽減されています。グランジェのトップジェルもローヒートタイプに改良済みです。
硬化熱のコラムにも詳しく記載していますのでよろしければお読みください。
ジェルに触れてしまうことによるリスク
硬化する前のジェルは基本的に皮膚刺激性のある成分で構成されています。
肌ではなく爪への優しさの記事なのでここでは簡単に触れておきますが、ソークオフの際、また塗っている時に皮膚についてしまうことによって、かゆみや炎症が生じるリスクがあります。ジェルネイルアレルギーという言葉も聞いたことがあるかと思います。
成分としてはよくHEMA(ヘマまたはヒーマ)こそアレルギーの原因で、HEMAを使っていませんと安全性をアピールしている商品もよくあります。ただ、実は代替成分が同じようなリスクを含有していることがほとんどのため、結局HEMAがスケープゴートにされているような印象です。
他にもジェル自体が弱酸性で安心です(他の商品は酸で爪を溶かすので良くない)、と謳うような商品もありますが、非水溶性のジェルは通常のpH値に変換するのは難しい(ガラス電極法というやり方なら可能)ので、真偽の程は定かではありません。
また、仮に酸性度の高いレモン汁やコーラを爪に浸しても爪に大きなダメージを受けるわけではなく、根拠が不明瞭です。HEMAのことも含めてジェルネイルの危険性を煽る売り方には意見の分かれるところかと思います。
消費者の皆さまには表面的な情報に流されずに商品の選択をしていただきたいと常々願っています。
いずれにしても、硬化前のジェルには直接触れないことが一番の対策になります。また、ソークオフでは触れずにオフできないので、リスクを避ける場合は、はがせるジェルネイルをお使いください。
爪にダメージを受けてしまったら
爪は髪の毛と同じくケラチンで形成されており、切っても痛くなくまた伸びてくるので多少のダメージはある意味問題ないと言えます。ただしそれは爪先端の白い部分(フリーエッジ)のこと。
そこよりも生え際側にダメージを受けると、酷い場合には弱くなって痛みが生じたり、指先に踏ん張りが効かなくなったりして日常生活に影響が出ます。
なるべくジェルネイルはお休みして、爪が生え変わるまで待ちましょう。ダメージを受ける場所にもよりますが、爪が生え変わるまでの期間は成人の手で半年から1年程度必要です。決して短い期間ではありませんよね。
結局爪に優しいジェルネイルとは
結論として、どんなジェルネイルでも完全に安全で爪に優しいものは残念ながらまだ存在しません。
メーカーとしては少しでもその理想に近づけたいと思っていますが、爪に優しいかどうかは商品そのもの以上に、お使いになる方の知識ややり方にかかっている面も大きいと感じています。
ぜひこの記事を参考に、爪に優しいジェルになるよう、上手にジェルネイルとお付き合いいただくことを願っています。